Patagonicus

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前の病院では2年間消化器外科で働いてた。
どんな剃毛にも立ち向かってきた。

どんな湿地帯もアマゾンも、きれいに剃りあげてきた。

私は、道具をすばやくそろえて、ごっちんを従えて、
患者さんの病室に飛び込んだ。

そこには、ちっちゃいおじさんが居た。

緊急の手術を前に、やや緊張の面持ち。苦しそうではない。

私は、長年で培ったトークで患者さんをリラックスさせながら、
剃毛へと いざなう。


「手術って、やっぱり、そんなとこまで剃るんですね・・」
という患者さんに、

「そうですね、やっぱり毛の中にはバイキンが多いので、
 ここから手術のあと感染したり うんたらかんたら~」
なんて軽快なトークで、なめらかに下着を下ろして、びっくり。


樹海だ。
樹海である。

ちっちゃいおじさんが、猛威をふるっておる。

ごっちんが、無理だって顔をしてる。
ここを剃毛するなんて無理だって顔してる。

大丈夫。
私は目で合図した。

ごっちん、見てて。
もし「剃毛病棟24時」ってドラマがあったら、
江口は間違いなく私だよ。

私はごっちんに右手を差し出し「ハサミ」と言った。
ごっちんは、すばやく、私にハサミを差し出した。


「完璧・・ですね」
ごっちんが憧れの眼差しで私を見た。

たった10分。
ノルウエイの森が、更地に。


そしたら、ナイスタイミングで、先輩とドクターが病室に来たので。

私は先輩に子犬のように駆け寄って
「剃毛したんで、確認してください」
って微笑んだ。

見て見て。
私の武勇伝。

先輩が、オーケーオーケーと、微笑んで患者さんを見た。
下半身を見た。
そして叫んだ。




「頭の手術よ――――――――!!」




この叫びをね、私は生涯忘れないと思います。
先輩、大西ライオンかと思った。

- 不活性で怠惰なアタシの肉体の神秘 (via 13py2)